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2024年11月6日
衆院選は与党大敗北、買い戻しで株価は反発。米国の大統領選待ち
鈴木一之です。衆院選が終わり自民・公明は大幅に議席数を減らしました。歴史的な大敗と言ってもよいでしょう。
それでも先週のマーケットはしっかりしました。月曜日から株価は大幅高を記録しています。そのあたりを概観してみます。
先週のマーケットでの主な話題は以下のようなものです。
・衆院選(自公大敗で過半数割れ、新たな連立を模索)
・米大統領選(トランプトレード、ドル高・円安が継続)
・日銀の金融政策決定会合(現状維持、植田総裁は予想以上にタカ派)
・日米企業の決算発表が続く(好不調が一段と鮮明に)
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10月27日、日曜日に衆院選の投開票があり、早い時点から自民党の大敗が判明しました。自民・公明は公示前の279議席から64も減らして215議席にとどまりました。過半数の233議席を大きく下回っています。
自公の過半数割れは2009年以来、15年ぶりのことです。政治資金規正法の収支報告書に不記載の議員を非公認として臨んだ自民党はもちろんのこと、より厳しいのは公明党です。党首の石井啓一代表までが落選して、選挙直前に就任した党代表を早くも辞任することとなりました。
石破首相は勝敗ラインを「与党で過半数」としていましたが果たせず、政権を維持するために新たな連立の枠組みを模索することとなりました。
白羽の矢が立ったのは躍進著しい国民民主党です。議席数を4倍の28議席まで伸ばし、比例代表の立候補者が足りずに2議席を他党に譲ったほどです。
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それでも株式市場は週明けから株価が大きく上昇しました。
何か大きな理屈や変化があったわけではありません。すでに前週の時点で「自公合わせて過半数割れ」はかなり高い確度で各メディアから報じられ、先回りして売りが勝っていたために悪材料の出尽くしで買い、という流れに大きく傾いています。
火曜日、水曜日もそのまま続伸して、日経平均は衆院選直前の38,000円割れから、2日半で39,400円まで急速に値を戻しました。
ここまでは9月末の自民党総裁選の前後における「高市トレード」、あるいは7月末の日銀金融政策決定会合を目前に控えた「円キャリートレード」のその後とほぼ同じ展開です。
すなわち、どこかで誰かがなんらかのシナリオを事前に描いて、それは「自公敗北」でも「高市総裁誕生、アベノミクス復活」でも「日銀、政策金利を据え置き」でもよいのですが、そのシナリオに沿ったポジションが積み上げられ、イベントが終わり事実が確定すればそれまでのポジションが解消される。その繰り返しです。
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売り方の買い戻しが短期集中的に行われ、それが水曜日までに一巡したあとは株式市場全体が軟調な動きに戻りました。結果として「選挙は買い」という、1960年代から続いてきた株式市場の習性、公式、アノマリーが今回はすっかり外れるという結果に終わりました。
石破内閣が発足して1か月。「納得と共感の政治」として新内閣がスタートしたはずですが、この1か月間は迷走ばかりが目立ちました。自説を覆して強引に実現させた衆院選は「新しい内閣を信任してもらえるのか、主権者たる国民に問う」という大義で臨んだものです。
それがここまで議席数を減らしたということは、納得も共感も得られず、信任も得られなかったことになります。責任を問われることなく続投となりますが、東北大学の糠塚康江・名誉教授が指摘するように、自民党総裁選で少し取り上げられた「選択的夫婦別姓」などは政党の間ではほどんど争点とならず、選挙の大半が自民党内の問題に終始しました。
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自民党がほとんど自滅の状態で終わった今回の選挙は、なぜ今ここで実施したのかとの疑問が残ります。野党の態勢が整う前に何が何でも衆院選を実施したかった勢力が、おそらくは自民党内にあるのでしょう。
しかし肝心の自民党が内部でふたつに分裂していては話になりません。結果的に選挙は完全に裏目に出て、今後は国民民主党を連立に取り込んで「自公国」で乗り切る構えです。
その一方で勝者のはずの野党サイドも、それぞれの政策をあらためて吟味すれば、猛烈な勢いで少子高齢化が進む日本の現実にはそぐわないものも数多く見られます。ここからの海外投資家からの評価が気になります。
それでも株式市場は、ことの良し悪しを問うところではなく、あくまで経済的な利益や損失が問われる場所です。よい例が米国で、どれほど社会の分断が進んでも、ピラミッドの頂点を構成する巨大企業の500社で構成されるS&P500指数は上昇してゆきます。
分断が進むほど富が偏在して、大企業の株価は押し上げられるという構図が近年は一段と強まっています。
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その米国では大統領選がいよいよ今週実施されます。
日本の衆院選よりも世界の政治・経済にとって米大統領選の方がはるかに大きなニュースです。マーケットは固唾を飲んでその結果を見守っていますが、4年前と同様に選挙結果はすんなりとは確定しないと予想されます。
トランプ氏有利で進んでいますが、カマラ・ハリス副大統領の支持率が、当の黒人の間で伸び悩んでいるとも伝えられます。その理由のひとつが「女性だから」というものです。
2016年にヒラリー・クリントン氏が挑戦して破ることができなかった「ガラスの天井」を誰が最初に打ち破るのか。史上初めて女性の副大統領となったハリス氏こそ、その筆頭格として就任当初から注目されてきましたが、そのハリス氏でさえ黒人の間で支持率が伸び悩んでいるという現実があります。
選挙結果次第ではまた暴動が起きる可能性があり、期日前投票が行われている投票所の周辺は早くも厳戒態勢が敷かれていると報じられています。簡単には結果が判明せず、今週もどのような展開が待っているのか、簡単には予想がつきません。
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マーケットではほぼ1か月前から「トランプ・トレード」がしきりと話題に上っています。トランプ氏が当選すれば減税は延長され、移民規制は強化され、関税が引き上げられます。短期的には財政赤字が急拡大し、インフレが再燃し金利が上昇して、ドルが上昇しやすくなります。
ドル高・円安が進行していますが、果たしてそれが大統領選後も継続するのか。ここでもポジションの巻き戻しが大規模に起こるのであれば、事前の予想とは反対の方向にマーケットは動きやすくなります。現在のドル高はトランプ氏が勝ってもドル安へ動きやすく、日本株には不利に働きます。
起こりうる出来事の予想が当たった外れた以上に、マーケットのポジションがどちらに傾いているか、その変化を予想することに比重が置かれるようになりました。簡単には結論が出ない状況です。
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先週末はもうひとつ、大きなニュースがありました。日銀の金融政策決定会合です。
政策金利は予想通りに据え置き、変更なしとなりましたが、植田総裁の記者会見に話題が集中しました。
植田総裁は今後の金融政策運営について「経済・物価見通しが(予想通りに)実現していくとすれば、政策金利を引き上げていく」と述べました。7月末の決定会合後に行われた記者会見での発言とほとんど変わらない内容です。
無風と見られていた今回の決定会合で、植田総裁はあえて7月会合と同じような趣旨を述べました。これが市場では金利引き上げに前向き、タカ派と受け止められ、為替市場では週末にかけて151円まで円高・ドル安が進行しました。
植田発言は「トランプ・トレード」で円安に傾いている現在の為替市場で、ドル高・円安を食い止める意向と見られます。12月の決定会合における政策金利の引き上げが視野に入ってきました。前回8月の時は、利上げ直後に史上最大の株価下落が引き起こされました。これも週明け以降のマーケットの波乱要因となります。
いずれにしても米大統領選です。年内最後で最大の政治イベントを目前にして、緊張感はいやでも増しています。ウォール街には「ハロウィンから感謝祭の間に株を買え」という格言があります。ここから11月下旬まで軟調な場面があるとするならば、そこで買うべき銘柄を今回の決算発表でしっかりと吟味する時間としたいものです。
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先週の東京株式市場はTOPIXが3週ぶりに反発しました。上昇率は+0.99%と前週の▲2.63%と比べてさほど大きくありませんが、いったんは下げ止まりました。東証グロース250指数は+5.20%と大幅に上昇しています。
大型株よりも小型株に流れが傾いています。大型株指数は+0.86%の上昇にとどまりましたが、小型株指数は+1.76%の上昇です。
バリュー株とグロース株はどちらも堅調でした。大型バリュー株指数は+1.58%だったのに対して、小型グロース株指数は+2.10%と上昇がより目立ちます。
騰落レシオは木曜日に94.32%まで持ち直した後、金曜日は82.33%まで低下しました。8月8日以来の低い水準です。日経平均のサイコロジカルラインは「5」まで低下しました。9月25日以来の水準です。
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TOPIX-17業種の騰落では、値上がりセクターが14業種に広がり、値下がりセクターは3業種にとどまりました。
値上がりセクターのトップは「電力・ガス」です。
女川原発の再稼働が実施された東北電力(9506)は週初の急上昇から週末に急落したものの、代わって中国電力(9504)、北陸電力(9505)、四国電力(9507)の地方電力株が堅調でした。
東京ガス(9531)も
(後略)