ブログ

2023年4月3日

金融システム不安が後退、日経平均は事実上の5連騰で28,000円台に

鈴木一之

鈴木一之です。4月になりました。春爛漫です。明日は入社式が一斉に催され、新入社員のフレッシュな皆さんが街にあふれます。何か新しいことに挑戦したくなる4月の始まりです。

@@@@@

米国、シリコンバレーバンク(SVB)の取り付け騒ぎから3週間、どうやら当初の動揺は収まってきた様子です。

NYダウは金曜日で4日続伸、NASDAQも3日続伸して週末の取引を終えました。先週はNASDAQ100が今年になってからの高値を更新したことが各方面で話題となりました。

金融システム危機に対する警戒感は徐々に薄れつつあります。米10年国債の金利は週初は上昇し、週末は低下に向かいました。

現在の市場環境において、金利は上昇した方がリスクが少ないとマーケットは見ているのか、反対に金利は低下した方がリスクはないと見ているのか、簡単にはわからなくなってきました。

インフレリスクを警戒して、金利の上昇をあれほど嫌がっていたマーケットですが、SVB破綻が表面化したこの3週間は、逆に金利の低下を警戒するようになりました。インフレで物価が高騰することは避けたいが、金融システム危機で世界が大不況に陥ることはもっと避けたいという、まさに究極の選択です。

今また金利が上昇し始めて、それを市場は「金融システム危機の後退」と好感しているフシが見られます。金利が上昇しているくらいの方が経済はまだ健全である、ということなのでしょう。

@@@@@

今回、SVBが突如として経営破綻に陥るきっかけとなったのが、急激な預金の引き出しです。

SVBの保有する預金残高は、2022年末の時点で1754億ドル(23兆円)です。それが破綻する前日の3月9日には、1日で420億ドルの預金が引き出されました。

さらに翌日の3月10日には1000億ドルもの巨額な流出が予想されたことから、金融当局が事業の停止を決定して預金保険公社の管理下に入ったのです。

ここまで急激な預金引き出しの原因となったのが、SVBによる債券運用の失敗です。さらにその遠因となったのが、トランプ政権時代に行われた銀行規制の緩和とされています。規制が緩和されたので、SVBのように過度のリスクを取る銀行が現れたということにつながります。

金融システムに対するマーケットの警戒感が薄れつつあった今週、注目されたのがFRBのバー副議長による議会証言です。

3月27日(月)にバー副議長は議会の公聴会において、「これまで見たこともないような規模と速さで預金の引き出しが起きた」、「全員が不意を突かれた」と述べました。

その上でバー副議長は、SVBに対する規制の失敗を究明して「間違いには厳密に対処する」と述べました。SVBの経営破綻は、金利の変動と債券の流動性リスクを同時に管理していなかったことが原因と当局は見ています。

その上で5月1日までに銀行監督と規制方針を見直すと発表しました。イエレン財務長官も3月30日に「銀行に対する規制緩和が行き過ぎかどうかを検討する」、「最近の事件で明らかになった銀行規制の亀裂を修復する」と講演の中で言及しました。

1日で中堅クラスの地銀の金庫がからっぽになるほどの預金引き出しのスピードは、誰も経験したことがありません。しかし何かのきっかけでいったん起こってしまうと、誰も対処できないという恐ろしい現実が待ち構えています。

@@@@@

現代社会の金融業界をめぐる複雑なデリバティブ取引は、引き金を引かれてしまった後の事後的な対処がむずかしく、それなら事前に規制を強化することで予防するしかありません。

3月30日、バイデン大統領は金融当局に金融規制の強化を要請しました。トランプ政権が1000億~2500億ドルの資産規模の中堅銀行への規制を緩めたことが今回の危機を招いたとして、規制緩和の撤回を求めています。

今後は緩められた銀行に対する健全性審査(ストレステスト)の基準が、再び元の厳しい基準に戻されることが検討されることになるはずです。

米国の金融政策が変更されると、特に引き締め政策への転換の場合は、世界のどこかで必ずと言ってよいほど大規模な経済の変動が生じます。1980年代の中南米債務危機、1994年のメキシコ通貨危機が代表的な事例です。

ドル高にしても、ドル安にしても、米国が極端な政策に走るとその陰では当初もくろんでいた政策の効果とはまるで違った方面に悪影響が表面化します。

今回のケースではそれが米国の地方銀行という、ノーマークでかつ最も脆弱な部分に現われました。その点で1987年のブラック・マンデーや2007年のサブプライム・ローン問題と同類とも考えられます。それらと比べて規模としては小規模なもので済んでいます。

これらの一連の規制強化はマーケットにとって重荷となりますが、それでも市場は徐々に落ち着きを取り戻しています。NYダウの大幅高、NASDAQ100の堅調さにつながりました。ここからは再びインフレとの闘いが再開されることになりますが、金融システムとは距離を置いているテクノロジー株に資金が戻りつつある点が何よりの朗報でもあります。

@@@@@

先週の東京株式市場は、TOPIXが反発しました。上昇率は+2.46%に達し、1月第4週の+2.90%以来の大きさとなりました。前週の下落(▲0.21%)を大きく取り戻しています。

規模別では大型株が中・小型株を上回りました。循環物色が効き始めており、出遅れセクターが次々と上昇に転じています。反対に東証マザーズ指数は▲0.70%と小幅ながら続落となりました。

スタイル別ではバリュー株、グロース株そろって堅調でしたが、金融システム不安が後退して市場環境が徐々に正常な姿に戻っていることから、バリュー株の上昇が目立っています。東証REIT指数も5週ぶりに上昇しました。

日経平均採用銘柄のうち、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回っている銘柄数は114銘柄となりました。これは採用銘柄(225銘柄)全体の51%で、前の週との比較では▲6銘柄減少しました。

テクニカル面では、騰落レシオが週末に121.64%に達し、再び120%超の過熱局面に入りました。12日ぶりのことです。日経平均のサイコロジカルラインは「7」まで上昇し、日経平均ボラティリティ指数は続落しています。

@@@@@

TOPIX-17業種のセクター別騰落では、17業種すべてが値上がりしました。最も値上がり率の大きかった業種は「自動車・輸送機」、「商社・卸売」、「鉄鋼・非鉄」となっています。明らかに出遅れ株が順番に物色されています。

自動車株ではトヨタ自動車(7203)を筆頭に、ホンダ(7267)、デンソー(6902)、トヨタ紡織(3116)から、トピー工業(7231)、NOK(7240)、ヤマハ発動機(7272)など幅広い物色が見られました。

EUが目指していた「2035年からの域内でのガソリン車の新車販売ゼロ」の目標を緩和して、合成燃料による内燃機関車を容認する方向に転換しました。これを受けて日本の自動車メーカーも少しは息を吹き返す素地が整ってきた模様です。

「商社・卸売」では東京エレクトロンデバイス(2760)、マクニカHD(3132)、たけびし(7510)などの半導体・電子部品商社が再び大きく買われました。

総合商社も木曜日の3月決算企業の権利落ち日に期末配当金を落としたばかりですが、金曜日には大半の商社株が配当落ち分を埋める上昇を見せました。

中でも三井物産(8031)が+8%近い上昇で商社株をリードしました。3月31日付の日本経済新聞に「三井物産が5月の中期経営計画の発表で、配当と自社株買いの合計である総還元性向を、現在の営業キャッシュフローの33%から引き上げる意向」と報じられたことがきっかけです。配当金の増額という材料にきわめて敏感な地合いが続いています。

@@@@@

「鉄鋼・非鉄」でも日本製鉄(5401)、JFEホールディングス」(5411)、合同製鉄(5410)など、休養十分の銘柄が一斉に買い進まれました。このあたりにも出遅れ株の循環物色が強まっている様子がうかがえます。

下落したセクターはありませんでしたが、上昇率の鈍かった業種として「情報通信・サービス」があります。

通信のNTT(9432)、

(後略)

日本株に関する情報をいち早くゲット!

ここでしか読めないメールマガジンを配信しています。
登録無料!

鈴木一之