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2024年6月4日

5月相場は月足でわずかながらプラスに転換、膠着感の強い状況が続く

鈴木一之

鈴木一之です。5月相場があっという間に終わりました。最長10連休のゴールデンウイークがついこの前だったような気がします。

株式市場は依然として、動きの小さな展開を余儀なくされています。米国ばかりでなく日本でも長期金利の上昇機運が再燃しており、あらためて不透明感を招いています。

それでも日経平均は5月相場で月足では前月比プラスとなりました。わずか+82円ほどの上昇で、しかも5月31日(金)の最後の1日だけで+433円も値上がりしたことが大きいのですが、かろうじて「5月に売り抜けろ」の相場格言は回避されました。

それでも最終日の前日まで、月足ではマイナスで推移していたのですから、9回裏の攻撃での「逆転サヨナラ本塁打」という感覚です。

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焦点はやはり金利動向です。日本の長期金利は前週からの流れを引き継ぎ、上昇の一途をたどっています。新発10年物国債利回りは一時、1.10%まで上昇しました。2011年12月以来、12年ぶりの高い水準です。

それ以上に米国で、金利上昇の圧力が高まっています。カンファレンスボードの消費者信頼感指数が予想を大きく上回る結果となったため、先週の米10年国債金利は4.6%台まで上昇しました。

それでも為替市場ではドル高・円安基調が継続しています。157円台後半までドル高が進み、ドルは円買い介入後の安値をつけました。日本と米国とで、どちらが金利上昇圧力が強いか競い合っています。

この金利上昇を嫌気して先週の米国株式市場は、NYダウ工業株が週を通じて軟調な値動きでした。1か月前の水準まで下値を切り下げています。

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株価下落の要因は金利動向ばかりではありません。政治面での不透明感も強まっています。

トランプ前大統領の4つの裁判のうち、最も早く判決が下されたニューヨーク地裁では陪審員は34件すべてを有罪と決定されました。7月11日に量刑が下されますが、トランプ氏はすぐさま控訴するとみられ、最終的な決着にはまだ時間がかかりそうです。

ただし有罪となったトランプ氏ですが、共和党大会で大統領候補に指名されることはほぼ確実です。今回のニューヨーク地裁の評決が大統領選に影響を与えるかどうか、与えるという見方と、影響はないという見方が米国内でも真っ二つに分かれています。

英国ではスナク首相が下院を解散し、7月4日投票の総選挙に突入します。保守党は野党である労働党に支持率で圧倒されており、14年ぶりに政権交代が実現する可能性が指摘されています。

日本でも東京都知事選(6月20日告示、7月7日投票)が近づいており、立憲民主党からは蓮舫氏が立候補を表明しました。小池都知事はまだ態度を表明しておりません。都知事選はその時々の無党派層の意向を探る重要な判断材料となるとされており、ここからの動向が重要となります。

終盤国会で岸田首相は、最大の焦点となっている政治資金規正法改正案について、公明党と日本維新の会から出された修正案を丸のみしました。その上で会期末の近づく通常国会内での成立を急ぎます。

すべては通常国会を無難に切り抜けるための方策です。果たして衆院の解散・総選挙はあるのか。内閣支持率が史上最低レベルに低い現政権としては、定額減税の効果と景況感との谷間でその時期を探ることになります。巷では街頭演説に立つ議員さんの姿を見かけることが増えてきました。少しずつ臨戦態勢に入っているようです。

日本、米国、英国、いずれの国も6月から7月にかけて、大きな試練を迎えそうな風向きです。今年も猛暑が予想されますが、後半戦への助走として6月相場はどうなってゆくのでしょうか。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが反発しました。先週も1週ごとにプラスとマイナスを繰り返しています。上昇率は+1.09%で、前の週の▲0.11%から反転しました。

規模別指数では、大型株指数は+0.81%にとどまりましたが、3週連続で上昇しています。一方で中型株指数は3週ぶりに反発し+1.69%、同じく小型株指数も3週ぶりの反発で+1.52%と堅調でした。

スタイル別では、TOPIX・バリュー株指数が+2.59%と上昇が目立っています。それに対してTOPIX・グロース株は▲0.15%と軟調でした。バリュー株の優勢がかなり目立ちます。

騰落レシオは5月15日以来、100%の大台を超えて102.59%で引けました。一方で日経平均のサイコロジカルラインは「5」に低下しています。4月25日以来の低い水準です。

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TOPIX-17業種のうち、値上がりセクターは12業種、値下がりセクターは5業種となりました。

値上がり上位のセクターは「電力・ガス」、「銀行」、「金融(除く銀行)」です。

この3業種を含めて、値上がり上位の5業種が2週続けてまったく同じ顔触れとなりました。これはきわめて珍しい現象です。それだけ現在のマーケットは物色の方向性に変化がないということでしょう。

値上がりトップの「電力・ガス」は、引き続き地方電力株を中心とした物色が見られました。先駆した北海道電力(9509)がさすがに行き詰ってくると、先週は東北電力(9506)、北陸電力(9505)、四国電力(9507)に物色の中心が移っています。

また関西電力(9503)、中部電力(9502)の大手電力にも物色がようやく波及してきました。生成AIが普及する過程で予想される、電力不足解消のための電力設備投資の活発化を引き続き評価しています。

値上がり第2位は「銀行」セクターです。国内外の長期金利の上昇を背景に、融資の利ザヤ改善が評価のポイントです。ここでも電力株と同様に、ちゅうぎんFG(5832)、しずおかFG(5831)、いよぎんHD(5830)、めぶきFG(7167)などの地方銀行株がにぎわっています。

メガバンクでも三井住友FG(8316)、りそなHD(8308)が高値圏で堅調でした。

値上がり第3位は「金融(銀行除く)」です。先週と同様に生損保各社が堅調です。自社株買いのMS&AD(8725)や、東京海上HD(8766)、第一生命HD(8750)も堅調でした。

反対に、値下がりセクターの上位は「食品」、「機械」、「運輸・物流」となりました。ただしいずれも下げ幅は小さなものにとどまっています。

「食品」はヤクルト本社(2267)、味の素(2802)、日清食品HD(2897)など幅広く下落しました。円安もあって原材料価格の上昇は続いており、一方でそのコストアップの部分を販売価格に転嫁する、次の値上げ戦略の時期が不透明ということが株価の重荷になっているように見えます。

「機械」では、ナブテスコ(6268)、ダイフク(6383)、荏原(6361)、クボタ(6326)というこのセクターの主力級の銘柄が軟調でした。

「運輸・物流」はJR東日本(9020)、京急(9006)、名古屋鉄道(9048)、近鉄G(9041)など鉄道株がほぼ一貫して下落しています。

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早いもので6月です。この時期に注目されるのは、何と言っても株主総会です。1年間の締めでもあり、スタートでもあります。

企業からは株主総会を意識して、事業活動に関するアナウンスが活発になっています。

先週は三菱重工(7011)が新しい中期経営計画を発表しました。防衛予算の大幅な増額を背景に防衛部門を中心に、「防衛、原子力、ガスタービン」の3本柱を最重要事業として位置づけています。

日本製鉄(5401)は

(後略)

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鈴木一之