ブログ

2025年2月4日

DeepSeek(ディープシーク)ショック、米新政権2週目で早くも波乱

鈴木一之

鈴木一之です。DeepSeek(ディープシーク)ショックなるまったく新しい脅威に世界が動揺した1週間でした。

トランプ政権がスタートして2週間が過ぎただけですが、出だしから波乱要因には困ることはありません。先週も1週間にわたって毎日のように米国発のニュースに翻弄されています。

先週の話題は、なんと言っても「DeepSeek」の出現です。オープンAIの「Chat-GPT」に匹敵する性能を持つ生成AIが突如として姿を現しました。

大統領就任式に合わせる形で1月20日にリリースされ、無料アプリのダウンロード数ではたちどころに世界首位に踊り出ました。質問(プロンプト)に対する回答の範囲やスピードもさることながら、最大の特徴は開発コストが通常の生成AIの10分の1という点です。

強力なライバルの出現によって、1月27日(月)の米国市場では、テクノロジー株が総崩れとなりました。エヌビディアは▲17%も急落し、ブロードコムも同じく▲17%も下落しています。NASDAQ総合指数は▲3%安でした。

@@@@@

翌日は急落したテクノロジー株が急反発したために多少は落ち着きを取り戻しましたが、週末まで神経質な展開となりました。

問題の本質は生成AIを運営する際のコストです。「DeepSeek」の出現まで、メタやマイクロソフトを中心に巨大テック企業のデータセンター投資が非常に活発になっていました。何兆円単位の巨額の資金が投じられ、前週もソフトバンクGを中心に5000億ドルものデータセンター投資がトランプ大統領の目の前で発表されたばかりです。

それが米国の雇用を増やし、大規模な資金を投じられる強固な企業だけがますます強くなるのですが、問題はそれだけの投資額を本当に回収できるのかという懸念です。電力使用量の爆発的な増大も懸念され、そこに開発コストが10分の1以下という「DeepSeek」が出現したのです。

膨らみ切った風船を針の先でつついたかのような反応が世界中で見られました。日本では半導体関連株が週明けから急落し、データセンター投資に関連するフジクラ(5803)、古河電工(5801)の電線株、高砂熱学工業(1969)、ダイダン(1980)などの空調工事株が売られました。

@@@@@

折しも先週はメタやマイクロソフトの決算発表がありました。首脳陣はそろって「DeepSeek、恐るるに足らず」との見解を表明し、株価も落ち着きを取り戻しています。大規模なデータセンター投資に引き続き資金を投じる姿勢も明らかにしました。

その一方で、台湾のデジタル発展部(デジタル発展省に相当)は「DeepSeek」が中国で製造されたことを強く警戒し、「機密情報の越境送信、漏洩の懸念がある」点を指摘しています。

米国は「DeepSeek」の開発にエヌビディアの先端半導体が使用されたか否かの調査を始めました。米海軍は職員に対して「DeepSeek」の無料アプリの利用を控えるように指示したと報じられています。イタリアではアプリストアから「DeepSeek」のアプリが削除され、ダウンロードできなくなりました。

@@@@@

イノベーションやテクノロジーの世界は、一夜で陳腐化する技術革新のスピードとの闘いです。向かうところ敵なしのエヌビディアも例外ではありません。

エヌビディアの行く手を阻むものがあるとすれば、それはグーグルやアマゾンのような米国の最先端テクノロジー企業か、あるいはそれらの資本援助を受けたスタートアップ企業になります。

そのような揺るぎようのない予想に対して、中国企業が脅威となって立ちはだかるとは思っても見なかった展開です。

果たして米国の規制当局はここからどのような行動に出るのか。トランプ大統領のテクノロジー強化方針はどう運営されてゆくのか。何よりも「DeepSeek」は本物なのか、実力を伴っているのか。データ管理はどうなっていて、本当に低コストでの開発が可能なのか。

株式市場における「マグニフィセント7」の高いバリエーションと高水準の設備投資はこれからも維持可能か。あらゆる疑問がそのまま今週以降に持ち越された形となりました。

@@@@@

市場の警戒はもうひとつ。トランプ政権の政策運営です。

新政権の発足から2週目。トランプ大統領は就任直後から大統領令を使って前政権の政策をことごとく覆すと公言してきました。

それがさすがに政権の発足直後ということなのか、先週は意外なほど静かな展開でした。大統領の側近を主要閣僚に送り込むための公聴会が開かれていることが大きいのかもしれません。

それでも週末にはカナダとメキシコに対して25%の関税が正式に発表されました。中国にも10%の追加関税をかける方針は貫かれています。

米国にとってメキシコは最大の輸入国です。昨年のメキシコからの輸入額は自動車を中心に5000億ドル近くにのぼります。同じくカナダは輸入金額では第3位で、鉱物・資源など4000億ドル近くになります。

米国にとって関税からの税収は増えるでしょうが、米国民が負担する家計の支払い額も同時に増えます。インフレも助長されかねず、「トランプ2.0」での懸念が本格的に始まったと思える事態に向かいつつあります。

@@@@@
@@@@@

先週の東京株式市場は、TOPIXは続伸しました。上昇率は+1.37%で、前の週の+2.67%よりは縮小しています。それでもTOPIXは州を通じて日経平均を上回って推移しました。TOPIXよりも日経平均の方が、テクノロジー株のウエートが高いためです。

規模別では、大型株指数の上昇が最も小さくなりました。+1.17%の上昇にとどまっています。中型株指数は+1.74%、小型株指数は+1.93%と大型株指数を上回りました。

スタイル別の株価指数では、バリュー株が優位です。大型グロース株の上昇が+0.42%にとどまっているのに対して、大型バリュー株は+2.21%まで上昇しました。銀行セクターの堅調さが影響していると見られます。

騰落レシオは100%超を4日間続けており、一段と上昇しました。週末値は109.52%まで上昇しています。日経平均のサイコロジカルラインは「8」に上昇しています。昨年12月17日以来の水準です。

@@@@@

TOPIX-17業種の騰落では、値上がりセクターが14業種に広がり、値下がりセクターは3業種にとどまりました。前週に続いて広範囲な上昇が見られました。

値上がりの上位セクターは「銀行」、「不動産」、「運輸・物流」でした。

反対に値下がりセクターの上位には「鉄鋼・非鉄」、「化学」、「機械」と前週に活躍した業種がそろって値下がりしています。

「DeepSeek」ショックの影響でテクノロジー株が日本でも売られ、その対極にある内需セクターがそろって上昇しました。

値上がりセクターのトップは「銀行」です。1月24日に日銀は金融政策決定会合を開催し、そこで政策金利の0.25%引き上げを決定しました。その直後から日本の長期金利は再び強含みとなっており、銀行セクターは週を通じて堅調でした。

三菱UFJFG(8306)、三井住友FG(8316)、みずほFG(8411)の3大メガバンクがそろって年明け以降の高値を更新しました。

これまでさほど動きのなかった地方銀行にも動意が見られ、千葉銀行(8331)、滋賀銀行(8366)、ひろぎんHD(7337)、西日本FH(7189)などが広範囲に上昇しています。

金利の上昇ばかりでなく、石破総理はかつての「日本列島改造論」に匹敵する意気込みで「地方創生2.0」を推し進める考えです。地方経済にどこまで活気が戻るか、それが地銀株の先行きにとって大きなカギを握っています。

値上がりセクターの第2位は「不動産」でした。三井不動産(8801)、住友不動産(8830)、スターツコーポ(8850)など大手不動産株が週を通じて堅調でした。

日銀が利上げに踏み切りましたが、これを最後にしばらくは利上げはないという見方が強まっています。住宅ローン金利の引き上げを前に駆け込み需要も顕在化しそうな勢いです。

値上がりセクターの第3位は「運輸・物流」です。中国が2月4日までの春節に入り、日本を訪れる中国からの観光客が急増しています。京急(9006)、近鉄グループ(9041)、JR西日本(9021)の電鉄株がそろって上昇しました。

小売セクターでも三越伊勢丹(3099)、Jフロント(3086)、高島屋(8233)のデパート株が買われています。個人消費の分野は依然として堅調です。

@@@@@

反対に値下がりセクターの上位は「鉄鋼・非鉄」、「化学」、「機械」となりました。

「鉄鋼・非鉄」は先週までにぎわっていたフジクラ(5803)、

(後略)

日本株に関する情報をいち早くゲット!

ここでしか読めないメールマガジンを配信しています。
登録無料!

鈴木一之