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2021年1月3日
NYダウは史上最高値、日経平均は30年ぶりの高値で年を越す
◎日経平均(30日大引):27,444.17(▲123.98、▲0.45%)
◎NYダウ(31日終値):30,606.48(+196.92、+0.64%)
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鈴木一之です。新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
年が改まりました。元日の関東地方は空が晴れわたって、雲ひとつない青空が広がっています。石川啄木の「何となく今年はよいことあるごとし/元日の朝晴れて風なし」が詠じた空そのままです。
2020年は新型コロナウイルスの感染拡大が全世界に広がり、100年に一度のパンデミックが襲いかかった年です。感染者数は世界で8200万人にのぼり、180万人が亡くなりました。ワクチンが超法規的な短時間で開発され、欧米で接種が始まったばかりですが、今なお猛威を振るっています。
その状況下で、米国市場ではNYダウ工業株とS&P500が大みそかの引け際に上昇力を強め、1年間の最高値で取引を終えました。NASDAQも上昇しましたがこちらは最高値にはわずかに届きませんでした。
年末年始は思わぬ株価変動リスクにさらされるものです。昨年はイランのソレイマニ司令官が無人機による攻撃で爆殺されるという恐るべき出来事がありました。
中東紛争が勃発してもおかしくない状況でしたが、その直後からコロナ禍によるパンデミックが発生したことで、国境を超えた地政学的リスクは抑えられるという想像もしなかった展開となりました。
投資家もその辺はよくわかっているので、年末年始はポジションを極力減らして過ごすことになります。したがって楽観は禁物ですが、今年は年末休暇が短いため米国市場が年間の高値で引ける、という好地合いをそのまま受け継いで年明けのマーケットを考えてもよさそうなムードです。
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主要な株価指数の年間の変動は以下のとおりです。
・NYダウ:28,538ドル→30,606ドル(+7.2%)
・S&P500:3,230→3,756(+16.3%)
・NASDAQ:8,972→12,888(+43.6%)
・日経平均:23,656→27,444(+16.0%)
・TOPIX:1,721→1,804(+4.8%)
・マザーズ:897→1,196(+33.3%)
1年間をざっと振り返れば、3~4月のコロナ危機による株価急落、5月から10月にかけてマザーズ銘柄にリードされた戻り歩調、そして11月以降の大型株による爆発的な上昇、となります。
特に11月以降の世界的な株価上昇は圧巻の一言です。米大統領選の終了とコロナウイルスのワクチン開発というふたつの買い材料に支えられて、日経平均は11月の上昇幅が+3400円を上回りました。これは史上3番目の上げ幅で、26,000円台の大台に乗せました。29年ぶりの高値水準です。
12月相場はさすがに息切れして、スピード感が早かった分の日柄調整をこなしていましたが、それが「明日が大納会」という12月27日(火)に突如として大きく上昇し、なんと27,000円の大台を突破するに至りました。30年ぶりの高値水準です。
年末ギリギリのこの時期は、国内機関投資家はまず動けません。海外投資家の買いが主力と見られますが、そのほかにも年末休暇を前にしたオプションのショート筋の買い戻し、中国の習近平・国家主席の病状不安説、などもそこに買い材料として加わりました。
大納会はさすがに一服しましたが、基調としては強い地合いを維持したまま越年となります。予想外のことばかり相次いで起こった2020年相場は、最後の最後まで予想をはるかに上回る展開となりました。
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そして週明け月曜日から2021年相場が始まります。相場変動につながりそうな材料は数え切れないほどあります。以下にそれを列挙しておきます。
・脱炭素、温暖化対策
・米国で新政権が誕生、「アメリカファースト」の修正、米中対立
・コロナ対策、ワクチンの普及
・国境をまたいだ人の移動の再開時期
・東京オリンピック・パラリンピックの開催
・経済の回復時期、金融・財政政策の先行き
・医療制度の整備(除くコロナ)、「2025年問題」
・ブロックチェーン、デジタル通貨
・データ資本主義の修正、「GAFAM」の次なる成長
・自動車産業の技術革新
・コンテンツ産業(ゲーム、音楽、動画配信)
・DX(行政、中小企業、学校、医療、家庭)
・地方経済の再生、副業解禁、移住、地方銀行
・働き方改革、リモートワーク、ジョブ型雇用
・ガバナンス改革、女性役員、持ち合い株式
・事業承継、M&A、TOBの多発
・エネルギー基本計画、電源構成、原発再稼働
・国土強靭化、都市再開発、老朽マンション、インフラ
・大地震、自然災害への対策
これらのひとつひとつがそのまま株式市場の物色テーマにつながります。いずれもすぐには答えを出すことのできないむずかしい問題で、それだけに関連企業は果てしなく広がりを見せます。
すでに昨年末の株式市場でも次の成長企業を探す上で、物色対象の模索が始まっているように見られます。正解はいつまでたっても得られないかもしれませんが、それらの答えを探してゆくのが2021年とその先の株式市場ではないかと考えております。
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最終週の株式市場は、TOPIXが反発しました。立ち合い日数は3日間しかありませんでしたが、12月27日(火)の上昇が効いて、上昇幅は+1.48%に達しました。日経平均は27,000円に乗せ、実に30年ぶりの高値水準となりました。
物色の中心は引き続き大型株です。規模別株価指数では、大型株が+1.83%の上昇に対して、小型株は+0.30%の値上がりにとどまっています。東証マザーズ指数は+2.96%と大きく上昇しました。引き続きグロース株が物色の中心でした。
REITの上昇は続いており、東証REIT指数は6週連続で上昇しました。REITオフィス指数は9週連続の上昇です。
TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、15業種が上昇し2業種が値下がりしました。
値上がりトップは「運輸・物流」で、第2位は「電機・精密」です。次いで第3位が「医薬品」、「電力・ガス」、「情報通信・サービス」となりました。
12月相場ではここまであまり主役になれなかった「運輸・物流」や「医薬品」の上昇が目立ちました。それとともにここまでの絶対の主役でもある「電機」や「情報通信」にも上昇が見られました。
「運輸・物流」のチャート(直近3か月)
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=282&mode=D
「医薬品」のチャート(直近3か月)
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=275&mode=D
「電機・精密」のチャート(直近3か月)
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=279&mode=D
一方の値下がりセクターには「食品」と「鉄鋼・非鉄」が登場しました。値上がり上位と値下がり上位は1週間でまったく反対の方向に入れ替わった形です。それだけ循環物色のスピードが速まっているようです。
「食品」のチャート(直近3か月)
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=271&mode=D
「鉄鋼・非鉄」のチャート(直近3か月)
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=277&mode=D
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2020年のTOPIX-17業種の年間騰落率をまとめてみました。
電機・精密:+23.9%
情報通信・サービス:+19.5%
機械:+15.9%
小売:+8.3%
素材・化学:+7.5%
–TOPIX:+4.8%—
医薬品:+2.7%
自動車・輸送機:▲1.8%
商社・卸売:▲2.0%
食品:▲3.9%
金融:▲7.2%
建設・資材:▲8.4%
鉄鋼・非鉄:▲9.8%
電力・ガス:▲13.3%
不動産:▲15.3%
運輸・物流:▲18.4%
銀行:▲21.6%
エネルギー資源:▲33.0%
年間を通じて上昇したセクターは6業種、下落したセクターは11業種となりました。同様にTOPIXの年間上昇率(+4.8%)を上回ったセクターは5業種、下回ったセクターは12業種でした。
値上がりトップは「電機・精密」の+23.9%で、次が「情報通信・サービス」+19.5%、さらに「機械」が+15.9%と続きます。
これらのセクターには「デジタルトランスフォーメーション」と「中国の景気回復」という2020年の世の中のトレンドを決定づけた大きな時代背景があると見られます。2021年もそれらは引き続きマーケットの中心的な話題となってゆくことでしょう。
年間を通じて値下がりトップは「エネルギー資源」の▲33.0%でした。次が「銀行」の▲21.6%、さらに「運輸・物流」の▲18.4%、「不動産」の▲15.3%と続いています。
日経平均は30年ぶりの高水準に達していますが、このように年間での下落率が二桁に達するセクターもかなりの数にのぼっています。これらのセクターの株式を保有している投資家はそれ相応の含み損を抱えている可能性があります。
まさに「物色の二極化」です。世界中で格差が問題となっていますが、株式市場でもそれが同時に進行していることになります。銘柄の選択が少しずれてしまっただけで、株式を通じた資産運用の成果に大きく差がついてしまった年でもあります。
企業間格差の本質は「企業業績」です。2021年はこの格差=企業業績が解消の方向に向かうのか、それともさらに拡大されてゆくのか。この点も大きなカギとなりそうです。
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12月31日に発表された中国・国家統計局の