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2024年12月10日

S&P500、NASDAQは史上最高値を更新、東京市場も4週ぶりに反発

鈴木一之

鈴木一之です。12月相場、最初の週の取引が終わりました。トランプ氏が大統領選に当選してほぼ1か月。そこから米国市場のきわだった強さがあらためて浮かび上がりました。

12月相場も米国株式市場ではS&P500、NASDAQがそろって史上最高値を更新しています。11月・雇用統計を控えて神経質な1週間になると見られていましたが、月初の経済統計は驚くほどよい内容のものばかりで、そこに12月中に実施されるFRBの利下げ観測が重なっています。

シカゴ連銀総裁でハト派と目されるグールズビー総裁はインフレ抑制の進展と利下げの継続に自信を示し、しかも「米国の利下げペースは来年減速する」との見通しを日本経済新聞社へのインタビュー記事の中で述べました。

長期金利は低下して、同時に米国の株価上昇に一段と弾みがつきました。NYダウ工業株は終値で史上初の45,000ドルに到達しています。

現在の米国経済は完全雇用に近い状態にあり、しかもインフレ率は目標に近づき成長率も堅調だと見ています。そのうえでグールズビー氏は「金利引き下げの速度を落とすことはまったく普通のことだ」との認識を示しています。

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しかし強いのは米国経済でも一部分だけという見方もでききます。

GMは10-12月期に中国の工場を閉鎖して▲50億ドルの特別損失を計上すると発表しました。今週は半導体のインテル、保険のプルデンシャルもCEOの交代が明らかになりました。いずれも業績不振の責任を取る形での辞任です。

経済好調の米国でもCEOの交代が今年になって加速しており、ナイキ、スターバックス、エスティ・ローダー、スリーエム、チャールズ・シュワブなど業界の代表企業に広がっています。今年1-10月のCEOの交代は米国だけで1824社にのぼり、前年比で+20%増加しているそうです。

交代の理由は各社各様ですが、概して言えることはS&P500に対して株価が大幅に出遅れていることです。成績のパッとしない経営者は株価の動きだけで交代させられるということです。インフレ経済への転換に翻弄される企業が相次いでいることが浮かび上がります。
欧州でもフォルクスワーゲンは同社史上初となる、ドイツ国内工場の閉鎖を巡って10万人規模の大規模なストライキが始まりました。ステランティスもCEOの交代を発表しています。

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経済界ばかりでなく、政治の世界でも現職が苦戦を強いられる状況が見られます。フランスは内閣不信任案が可決され、9月に誕生したばかりのバルニエ首相はマクロン大統領に辞表を提出しました。ドイツも同様に厳しい状況を強いられていますが、ドイツの株価は史上最高値を更新しました。

不確実性の高まりはアジアも同様です。韓国ではユン・ソンニョル大統領が突如として、12月3日(火)深夜に「非常戒厳」宣言を発表し世界を驚かせました。

議会運営が思うにまかせず、国会が空転していることから思い切った手段に訴えたと見られます。それにしてもあまりの性急なやり方に国内外から批判が高まっており、戒厳令は国会審議で圧倒的多数で否決され、わずか半日で解除されることとなりました。

その後に提出された大統領に対する弾劾決議案は否決されましたが、ユン・ソンニョル大統領は謝罪し、今後は一段と求心力が低下することが警戒されます。

中国、台湾の間での軍事的な緊張に加えて、安定していると見られた韓国も動揺し始めたことから、東アジア地域での安全保障が脅かされつつあります。日本では週後半から防衛関連株の人気が再び急浮上することとなりました。

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日本も決して状況はよくありません。不安定な経済状況を伝える統計データがいくつか明らかになりました。

財務省が発表した7-9月期の法人企業統計では、全産業ベースの経常利益は23兆124億円(前年同期比▲3.3%)となりました。7四半期ぶりのマイナス転落です。円高が製造業の利益を押し下げており、製造業だけでは▲15.1%の減少でした。

また、総務省から発表された10月の家計調査では、2人以上世帯の消費支出は305,819円で前年比▲1.3%の減少でした。3か月連続でのマイナスです。気温の高い日が続いたため秋冬商戦が低調だったことが響きました。

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イトーヨーカ堂は2026年2月期までに最大で1000人、▲17%の正社員削減を行います。店舗数も2割減らして収益の改善を急ぎます。

三菱UFJ銀行はロボアドのウェルスナビをTOBを通じて子会社化する方針を明らかにしました。新NISAの開始で個人向け運用の競争が激化しており、ウェルスナビの広告費負担が大きくなっていることが要因のひとつです。

卵の卸値は夏場以降、5割近く上昇していることが明らかになりました。食品会社は相次いで年明け以降の値上げを表明し始めています。

鉄道でもJR東日本は2026年3月に運賃の値上げを実施します。消費税引き上げを除けば民営化後では初めての運賃値上げで、日本ではインフレ第3幕(第4幕?)が始まったかのような動きです。

政治の不安定さ、インフレに収束の兆し見えず、財政赤字の拡張、ポピュリズムの台頭、これらの要因が一度に重なって、ビットコインが史上初となる10万ドルの大台突破まで上昇しています。米国株式市場には怖いもの知らずの上昇が続いているものの、マーケット上では十分に警戒すべき動きも広がっているような印象となっています。

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先週の株式市場は大きな材料はなかったものの、物色動向は多岐にわたり実に目まぐるしく過ぎました。日替わりメニューで人気銘柄が変わり、月曜日は銀行株が全面高、火曜日は半導体関連株、水曜日には小売株が軒並み高となりました。

さらに木曜日には防衛関連株と電線株、そして金曜日には小型グロース株と一日ごとに人気セクター、テーマが入れ替わり、日経平均やTOPIXで感じられる以上に変動の大きな日々だったように思います。

TOPIXは3週連続で下げたあとに4週ぶりに反発しました。上昇率は+1.73%に拡大し、前週の▲0.59%から大きく切り返しました。

戻りの中心は大型株で、下げを主導したのも大型株、反発も大型株がリード役となっています。大型株指数は+2.0%の上昇で、小型株指数の+0.96%を大きく上回っています。

スタイル別では大型グロース株が+2.37%と大きく反発したのに対して、小型グロース株は+0.71%の上昇にとどまりました。逆行高となっていた東証グロース市場250指数は反対に3週ぶりに下落しました。

騰落レシオは月曜日に114.90まで上昇した後、週末には98.84%まで低下しています。日経平均のサイコロジカルラインは週末は「7」に上昇しました。11月13日以来の水準です。

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TOPIX-17業種の騰落では、値上がりセクターが15業種、値下がりセクターは2業種にとどまりました。

値上がりトップのセクターは「金融(除く銀行)」です。第一生命HD(8750)、SOMPOホールディングス(8630)、T&Dホールディングス(8795)などの生損保が総じてしっかりしました。

このところ銀行株優位の展開が続いてきましたが、それに対抗する形で銀行株がわずかに一服する間隙をついて他の金融セクターが堅調となっています。

値上がり第2位のセクターが「電機・精密」です。イビデン(4062)、ミネベアミツミ(6479)など半導体の一角はまだ軟調ですが、日立(6501)、ソニーグループ(6758)、TDK(6762)、JVCケンウッド(6632)、カシオ計算機(6952)などが大きく上昇しました。大型株が好まれています。

値上がり第3位は「機械」です。三菱重工(7011)、IHI(7013)の防衛関連株は引き続き人気の中心です。それに加えて荏原(6361)、ダイフク(6383)、ヤマシンフィルタ(6240)、日立建機(6305)が目先の底打ち感から切り返しています。

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反対に値下がりセクターのトップは「電力・ガス」です。週を通じて軟調でした。電線株や空調工事株など一連のデータセンター関連株はにぎわっても、肝心の電力セクターは総じて軟調な値動きに終始しました。

エネルギー基本計画の公表を控えており、原発や再エネ比率をどの水準に定めるのか、国民的な関心が年末年始にかけて高まりそうです。

値下がりセクターの第2位は「運輸・物流」でした。前の週ににぎわった京成電鉄(9009)、京浜急行(9006)は総じて静かな値動きに終始しました。JR東海(9022)も下落基調にあります。

それに代わってヤマトHD(90654)、

(後略)

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鈴木一之